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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
秘呪相争
益満は、庄吉の二の腕の上を縛り直してから、疵口を解いて
「何を盗った?」
「何んだか――親爺の大切にしているもんでさあ」
膏薬を貼ったらしく、斬口がひやりとした。強い臭が鼻を突いた。益満が貼ってくれたので、何んだか、効く膏薬のように感じた。
「書類か? 何うした、何処にある?」
「握ってまさあ」
「握って?」
「斬られた腕が――」
庄吉の左手に握っている腕を、益満が、さぐり当てると共に
「えらいぞ、庄吉」
と、低く、だが、力強い声で囁いた。
「ええ」
と、いって、庄吉は、涙を流した。
「出来した――見上げたぞ」
庄吉は、微かに、すすり上げていた。
秘呪相争
息災、延命の護摩壇は、円形であった。中央に八葉の蓮華を模した黄白の泥で塗った火炉があり、正面を北方として、行者は、南方の礼盤上に坐るのである。
右手には、塗香と、加持物、房花、扇、箸、三種の護摩木を置き、左手には、芥子、丸香、散香、薬種、名香、切花を置いてある。行者の前の壇上には、蘇油、鈴、独鈷、三鈷、五鈷、その右に、二本の杓、飯食、五穀を供え、左手には嗽口、灑水を置いてあった。
部屋の壁には、青地に四印曼荼羅を描いた旗と、蓮華広大曼荼羅を描いたものとを掛けて、飯食を供し、旛の上方には、加治木玄白斎が、自分の血で、三股金剛杵を描き、その杵の中に、一宇頂輪の真言を書いた。