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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
月丸が、右手で、刀を抜き払って、左手で眼を防いだが、砂が、眼に入ったらしく、そのまま、佇んで、眼を押えてしまった。
「二度も、生臭坊主の手込めに逢った上は、恥辱であろうから、死ぬがよい。首を縊るなら、枝が、いろいろとあるし、腹を切るなら、得物は手にあるし――隼人が、泣いてはいかん。泣くくらい口惜しければ、切腹するのだの。引導は、わしが、勤める――」
月丸は、眼を拭きつつ、一寸、開いてみて、一足進んだ。そして、顔中を、しかめて、又、一足進んだ。そして、もう一度、涙で開かぬ眼を、開いて、一足進んだ時、第二の砂が、あっと、思って、眼を閉じた瞬間、それよりも早く、眼を刺していた。月丸は、刀を振りかざして、崖を、一飛びに、登った。その刹那
「馬鹿っ」
小太郎は、声と、身体とを、一つの鉄丸のように、月丸へ、叩きつけた。月丸は、草の中へ、仰向きに、ぶっ倒れた。
「若旦郡、その馬鹿野郎をっ――」
と、南玉が、叫んで
「月丸って――あの、綱手様を、殺した月丸?」
小太郎は、倒れたまま、暫く、起き上らない月丸から、南玉へ振向いて
「そうじゃ」
と、頷いて、足の泥を払って、縁側へ、上って来た。