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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
そして、お由羅の生んだ久光は、聡明な子の上に、斉興の手元で育てられた。
(斉彬を廃して、久光を立つべし)
それは、斉彬の近侍の外、薩藩大半の人々の輿論であった。玄白斎は考えた。
(斉彬を調伏して、藩を救う――然し――)
老人は、山路を、黙々として、麓へ急いだ。
黙々として歩いていた玄白斎が、突然
「和田」
と、呼んで立止まった。和田が、解しかねる玄白斎の態度を、いろいろに考えていた時であったから、ぎょっとして
「はい」
と、周章てて、返事して、玄白斎の眼を見ると
「その辺に、馬があるか、探してのう」
こういいながら、腰の袋から、銭を出して
「一っ走り、急いで戻ってくれぬか」
和田は、何か玄白斎が、非常の事を考えているにちがいない、と思うと、ほんの少しでもいいから、それが、何んなことだか、知りたかった。それさえ判れば、自分にも多少の智慧もあり、判断もつくと思った。それで
「御用向は?」
「千田、中村、斎木、貴島、この四人の在否を聞いてもらいたい――居ったら、それでよい。もし居らなんだ節は――」
玄白斎は、髯をしごきながら
「何時頃から居らぬか?――何処へ行ったか? 誰と行ったか?――それから、便りの有無――よいか、何時、誰と、何処へ行ったか? 便りがあったと申したなら、何時、何処から、と、これだけのことを聞いて――」