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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
旅の初日に出た肉刺は、二日や、三日で癒らねえし、その脚じゃあ、今日、当り前なら六里歩けるところが、無理なすったため、半分歩きゃあ、又へたばっちまいますぜ――又蔵さん、いい齢をして、何んのためのお供だい」
「そうともそうとも」
茶店の亭主が、茶を汲んで来て、庄吉の喋っているのへ相槌を打った。
「それくらいのことあ心得てらあ。ところが、そうは行かねえんだ」
又蔵が、不平そうに云った。七瀬は、又蔵へ気の毒な気がしたし、気ばかりあせって、旅慣れない自分に、軽い後悔も、起って来た。庄吉は、合羽の間から、懐へ手を入れて
「悪気で云うんじゃあねえ。怒んなさんな。所で――」
鬱金木綿の財布を、七瀬の前へ置いて、部屋の隅へ小さく腰をかけた。
「ええ――これは、御道具を売った金でござんす」
三人は、一時に、財布と、庄吉の顔とを見較べた。七瀬が
「何んという名であったか――そちの志は、よう判っていますが――」
「うんにゃ、一寸もお判らねえ――何んとか、ござり奉って、御返答申し上げ遊ばすおつもりでげしょうが、あっしゃあ、もう少し――やくざ野郎だが、この胸んところを買ってもれえてんだ。