Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

侍も、浪人も、二人を一瞬に斬った益満の腕と、その態度とに、すっかり圧倒されてしまっていた。頭も、身体も、しびれたように堅くなってしまって、恐怖心だけが、あふれていた。

益満は、左手の煙管を口へ当てて、舌の先で、ぽっぽっと音させつつ、右手の刀を、浪人の咽喉の見当へ三尺程のところから、ぴたりと当てて

「たって斬ろうと申さん。逃げるなら、逃げるがよい――後方が危い、もっと、左へ、そうそう」

益満の刀の尖と、浪人の咽喉とが、何かで結ばれているように、ぴたりと膠着していた。益満は、煙管を口にくわえて、刀を左手に持ち直した。そして、懐へ右手を入れて、短銃を取出した。そして、刀と短銃とを左右に持って、二人へ突きつけながら、微笑して

「こういうものもある――選り取り、見取りに取りゃしゃんせ。お七ゃ、八百屋の店飾り、蜜柑に、鉄砲、柿、刀。心のままに取りゃしゃんせ――何うじゃ。買手が無ければ、陽が暮れるからのう」

二人は、駕屋さえ居なかったなら、逃げ出すか、謝罪するか?――頭も、身体も、ただ、苛立たしさと、恐怖とが、燃えるように、感じられるだけで、何うする方法もなかった。