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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
「何か、江戸で騒いでいる模様でござりますが――」
「今の別嬪も、その片割れじゃが――何うも、斉興公が、斉彬公に、早く家督を譲って、それで己が出世しようという――斉彬公を取巻く軽輩には、多分にそれがある」
「然し、島津の家憲では、御世子が二十歳になられたなら、家督をお譲り申すのが常法でござりませぬか」
袋持は、調所に、遠慮のない口調で、いい放った。
「幕府も、いろいろ手を延して、早く、斉彬公の世にしてと、阿部閣老あたり、それとなく匂わしておるが――一得一失でのう」
「一得一失とは」
「お前には判らん」
百城が廊下へ膝をついて
「まだ差立てませぬと、申しておりました」
「いかんのう――兵制を改めて洋式にしたので、異国方め、ぶうぶう申しておる最中に、廃止手当を遅らせては――」
調所は、国許の反由羅党、反調所党の顔触れを見た時、すぐそれが斉彬擁護の純忠のみでなく、兵制改正、役方任廃に就いての不平者、斉彬が当主になれば出世のできる青年の多いことが目についた。
(そうだろう。そうそう忠義ばかりで、命を捨てられるものではない。万事は金、原因は何うあろうと、今度の動機は利害のこと――結果も、利害で納まるだろう)