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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
小太郎は刳形へ、手をかけて、親指で、鯉口を切った。
「これは、なかなか、手配りがついておる。前だけでなく、左右、後方へも、気を配らんといかんぞ」
と、八郎太が、注意した。
「斬れっ」
一人が、すぐ刀を抜いた。
「待て待て」
四十余りの、紬の袷に、茶の袴をはいたのが、人々を止めて、前へ出た。そして、二人を左右に見て
「この下に、見張の者が、二人、居ったであろうがな。それを、何んとした?」
八郎太が
「さあ――何んとしたかのう」
三人が
「斬れっ」
「面倒じゃっ」
と、叫んで、八郎太と、小太郎とに迫って来た。
「そうか――目といい、支度といい、二人を斬捨てて来たに相違ない。人を殺した以上、己も殺されるということは承知であろう。御山を汚した以上、御山の罰を受けるということも承知であろう――」
「天童、貴公の説法は、了えんでいかん――さあ、参れ」
一人が、八郎太へ、正眼につけた。一人が、それを援けて、右側から、下段で迫って来た。
「小冠者っ」
天童は、刳形へ手をかけて、ずっと、鞘ぐるみ刀を――丁度、柄頭が、自分の眼の高さに行くまでに延した。古流居合の手で、所謂鞘の中に勝つ、抜かせて勝つ、という技巧であった。