Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
本心は父と同腹であろう。恋する者には、対手の肚の中まで読める。命にかけての――綱手殿、命をかけて――」
月丸は、女の耳朶へ、時々、脣を触れさせつつ、微かに、だが、情熱的に囁いた。そして、両手で、腕と、肩とを抱きしめていた。綱手は、顫えながら、そして、軽く抵抗しながら、肩が、腕が、肉体が、血が、男の締める力を快く感じているのを、何うすることもできないで、羞恥と、興奮とで、物もいえなかった。
「百城様――」
「うむ」
月丸は、眠りかけているらしく、鈍い返事しかしなかった。綱手は
(こうなりました上は、一生、見棄てないで――)
と、云いたかったのだが、口へは出せなかった。
(眠っていらっしゃるなら、丁度いい。そんな恥かしいことが、口へ出せるものか)
とも、思ったが、月丸が、ただ、うむと一言だけしかいわなかったのが、ひどく物足りないようにも感じた。そして、だんだん眼の冴えて来る自分と、もう、眠りかけている月丸を較べて
(男というものは、こんな人間の大切な時に――一生に一度の大事な時に、こんな気楽なものかしら?)
とも思った。
身体中が、熱っぽいようでもあるし、しびれているようでもあるし、何かが抜け出したような感じもするし――不安でもあるし、幸福にも思えるし――生娘で無くなったという後悔は、少しも起らないで、明るい未来の空想