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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
話ゃ、後だって、出来らあ」
「獣?――獣たあ、何んでえ。駕をもって、遊んでるんじゃあねえや」
「そうとも、駕屋、しっかりやれ。小藤次、貴公にゃ手頃の対手じゃ。一番、大工上りの手強いところを見せてやれ」
「何っ」
小藤次は、刀へ手をかけないで、腕捲りをした。
「殺されたって、男の意地だ。女は、やらねえ。やいっ、深雪、このまま逃げりゃあ、お尋ね者の益満と一緒に、ただじゃ置かねえぞ。おとなしく一緒に、俺と――」
と、小藤次が、云った時、駕屋が、向う鉢巻をして
「乗らなきゃあ、いくらか、酒手を貰おうかい。えっ、旦那、二本差していて、人を呼んでおいて、駕屋、いらねえじゃあ、旦那の方が、獣でげすぜ」
益満が
「駕屋、この娘を乗せて参れ」
「へい」
「三田四国町、大工小藤次のところまで――」
そう云って、懐から、銀を渡した。
「何を――」
「利武殿の許へ、送り申そう。ついて参られるがよい」
小藤次は、益満を睨みつけていた。深雪が、ためらっているので、眼で合図して、乗せると
「駕屋、急いでくれ」
「合点だっ」
駕は、小走りに走り出した。益満も、つづいた。小藤次は、何う考えていいか、判らないで、ぼんやりしながら――然し、駕が走り出すと、自分も、その背後から、走るより外に、方法が無かった。