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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
そして、供の三人が
「曲者っ、曲者っ」
と、叫んだり、一人の鷹匠が
「大変だっ」
と、叫びながら、走り出したのを見ると
(斬られるな)
と、思った。だが、三人の近侍は、馬側へ集まって、一人は、素手で
「広岡っ。たわけっ、たわけっ」
と、狂的に絶叫しながら、広岡へ組みつこうとした。広岡は、初太刀を払われて、二の太刀を――片手突きに突いた。
「誰か」
と、久光は、絶叫して、鞍の上で、身体を反らせた。馬が、前足をあがいた。久光は、落ちまいと、手綱を引きしめていたが、突いた刀が、帯へ、刀尖が当ると同時に、ぐらっと、大きく揺れた。
久光は、蒼白になっていた。広岡の刀の、反対側へ飛び降りて、馬を楯にするという寸法よりも、馬を走らせて、逃げようとしていたが、広岡の刀を避けて、身体を反らしたり、曲げたりしたため、馬が走らなかった。
広岡は、一人の近侍を組みつかせたまま、素早く、三度目の刀を、振下ろしたが、それは、一人の鞘ぐるみの刀で、受留められてしまった。
「仙波っ」
広岡は、捻じ倒そうとする近侍の脚がらみに、よろめきながら、こう叫んだ。一人が、広岡の後方から、組みついて、右腕を掴んだ。