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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
大久保は、こういって、二人のところへ上って来た。そして、俊斎の膝の上の、表紙を読んで
「見せてみい」
と、手にとった。西郷が
「行こうか」
と、俊斎に、声をかけた。
「行こう」
「待て、一寸、話がある」
と、大久保が、止めながら、読んで行った。
一、知政の当初、国政を誤りたる専横の徒を、貶黜すべき事
一、お由羅の方以下の奸人を処分する事
一、近藤崩れ(お為派崩れ)に、流謫したる人々を、速に召喚する事
一、兵政を改革し、範を水戸に、取る事
一、天下の気運に乗じ、幕府と雖も、天朝のお為とすべき事
一、異国交易の儀、配慮深かるべきこと
「成る程」
大久保は、こう云って、書類を、机の上へ置いて、立っている西郷に
「坐れ」
と、云った。そして
「有村、韃靼冬に、集まっているらしいが、人の余り近寄らぬところへと思うて、選んだにしては危いのう」
「そうか」
有村は、冷やかに答えた。
「名越の別荘へなど、何処に、犬がかくれているか?――思慮が無さすぎる」
「人間思慮のありすぎる奴も、おもしろうない」
「西郷」
と、大久保は、西郷の大きい、光る眼を、じっと凝視めながら
「大殿の今度の御処置だけで、天下に、恥を晒したに、又候騒動を持上げて、斉彬公のお心にもとるなど、思慮があると思うか、無いと思うか。