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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

と、西郷が、云った。

「貴公は、天下をとることを考え、俺は治めることを考えているが――取ってから治めるものか、治まった国が、天下を取るものか――わしは、近頃の天下の動揺も知っていると共に、当家の動揺も知っている」

「貴公の論は、了えんでいかん」

と、有村がいって

「行こう」

と、勢いよく立上った。西郷は、有村に答えないで

「のう、大久保、斉彬公が、仰せられる、天下のため、ということは、今を指すのではあるまいか。俺はいい日の下に生れ、いい主の下におると、この心が躍り上っている。古くば、関ヶ原、近くば、木曾川治水、積年の鬱憤を、晴らすべき時節じゃ」

大久保は、又、建白書の草案を、膝の上で披げていた。

「そのためには、非常手段を取ってもよいと思うてな――」

西郷は、大久保が、膝から眼を放さないので

「大久保」

と、言葉をかけた。大久保は、頷いて――だが、俯向いたまま

「手段とは?」

「益満に、昨日、手紙を出した。あいつなら、やると思うが――江戸中を荒し廻って――人を斬るなり――押込もよい、強奪もよい。とにかく、江戸中を騒がせて、三田の御邸へ匿れるのじゃ。上役人から、引渡せと申して参ろう。