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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

足音が、遠くから、入り乱れて、響いて来た。人々が、戻って来たらしく、話声と共に、近づいて来た。そして、襖が開くと

「一人で?」

七八人の人々が、入って来て、どかどかと、坐って、刀を、座に置いて

「いよいよ、天下、動乱かのう」

一人が

「月丸」

と、呼んで

「頼山陽の倅を存じているか」

「三樹か」

「三樹三郎が、捕えられた。今、聞いて参ったが、京都の天地は、今にも、覆りそうだぞ。おもしろうなって来たわい」

と、いって、酔っているらしく、刀を、どんと畳の上へ、響きを立てて、突立てた。

おなあーじ、ツンテン

庄吉は、大きい声で、歌を唄いながら、湯殿へ入ってきた。その後方から、南玉が

「根に出た朝顔が、かね」

蔓の先にて、いがみあい、テンシャン

湯殿の中も、湯槽の中も、湯気と、乏しい光とで、薄暗かった。庄吉は、唄いながら、戸棚の上へ着物を脱ぎすてて、右手の切口へ、手拭を、巻きつけて

「御免よ」

と、湯槽の中へ降りた。黒の人影が、うごめいていて、話が、立籠めていた。南玉が、庄吉のあとから

ぽこぺっぽ、ぺっぽっぽ

風呂は、鉄砲で、ぺっぽっぽ

船は、黒船、おそロシヤ

はい、皆様、御免なさいっ