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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

庄吉は、俯向いて、呟いた。南玉が

「講釈の本にも、そう書いてある。牧、牧直しに叡山登山の条、ての」

「いろいろと、忝ない。急げば、明後日には、京へ入れようが、その足で、とにかく、叡山へ参ろう」

「では、若旦那、大津から坂本へ出まして、そこから」

「そう」

小太郎は、頷いて

「父の墓参も致したいし、義観と申す、命の恩人にも、礼を申したい」

「お兄様」

と、深雪が

「お姉様の、お墓は?――何処に、ござりましょうか」

「綱手か――墓はない」

「では、埋めましたところは?」

「知らぬ」

深雪は、俯向いた。四人は、暫く黙っていた。深雪が

「妾、お姉様の、笄と、肌襦袢とを、持って参っておりますが、それを、お父様の、お墓の横へ――お墓を立てましては?」

「姉の墓よりも、己の墓のことを考えい。今度の旅は、死出の旅と、同じであるぞ」

「はい」

「庄吉に、吾々と一緒に、葬ってくれるよう、頼んでおけ」

「はい」

庄吉が

「あっしらの骨も一緒に、その義観って、ずく入に、頼んじまおうじゃござんせんか。四人心中の墓ってね。一人二人は、面倒臭えや、師匠も、死ぬだろう。もういい齢だから」

「うむ、齢と一度、相談してきめようかの」