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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

将曹づれを討つにしても、矢張り命を棄ててかからぬとのう」

「長州が、鷹司家へ、よく出入するようになったと聞いたが、長州も、動くのか」

「長州も、土州も、続々浪人して、京へ集まって来るらしい。水藩の有志なども、四方へ奔走しているそうだ。益満が、もう、来る頃ではないか? 彼奴に、江戸のことを聞いて」

と、いった伊牟田が

「有村、もう、追手は、諦めたらしいぞ。そう、漕がずとよい。今度は――」

と、立上って

「わしが代ろう」

と、艫の方へ行った。有村は、それでも、漕ぎながら

「牧の奴、大阪にいるというが、本当かのう」

「居るには居ったが、今は、居らんらしい。何んでも、伊吹山、とか申す山へ行ったと聞いたが――」

「伊吹山なら、あれだ」

と、有村が、指さした。伊牟田が

「そうか」

と、云って、その方へ眼をやりながら

「小太郎などと申す代物は、一体、何うしているのか? 父の仇、主君の敵でありながら――討てば忠孝両全のことを――」

「人のことは、何うでもよい。同志への誓約を、果した上は――」

「果したとは云えぬぞ」

「果したことにしておけ――あれが、唐崎であろう。早う、京へ入って、人を斬らんと、短銃で、やり損じて、胸につかえた形だ」