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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
「へい」
襖を開けて、入って、有村に
「お越しなさいませ。手前、庄吉と申す、やくざで、ございます」
左手をついて、丁寧に、御叩頭をした。有村が
「うむ」
と、頷いた。深雪は
(あんなに、威張って――)
と、又、腹が立った。
(貴下方よりも、ずっと、庄吉の方が、よい人間でございます。武士の、士のと云って――人を見下げてばかりいて、本当に、やさしい心の人は、一人だっていないのに――それどころか、人の母を殺し、姉を殺し――)
と、思ってくると、有村も――益満さえ、憎くなってきた。
「深雪と一緒に、叡山へ行ってくれんか、墓詣りにの。すぐ立てば、白川へは、夜に入らぬ内につくであろう。気晴らしに、行って来るがよい」
庄吉は、俯向いたまま
「はい」
と、答えた。
「その間に、わしは、同志と打ち合せをしておく。或いは、小太郎と、逢えるかも知れんが、逢ったなら、共々、ここへ参るがよい」
「ほほう、小太郎が、叡山に?」
と、有村が、
「彼奴は、よい稚児であろうが」
深雪は、自分だけでなく、兄まで、汚されるような気がして
「行って参ります」
と、益満へ、手をついた。
「庄吉、物騒なところゆえ、気をつけい」