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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
庄吉は、南玉の顔へ、鋭く眼を光らせて
「来たか、彼奴」
深雪が
「いつ頃?」
「今しがた、未だ、その辺に、うろうろしているかも知れん」
庄吉と、深雪とは、右を、左を、振向いた。杉木立ばかりであった。部屋の中では、義観が、小太郎に、何か云っていた。小太郎は、俯向いて、手を膝に、頷いていた。
「そして、師匠、若旦那は、月丸を、見逃しちまったのかい」
「うむ」
「何うして? 何うしてだい。そんな法ってものがあるけえ。野郎、何っちの方角へ、行きゃあがった」
「大きい声するな」
南玉が、低く叱った。
「するなって、そんな法があるけえ」
「ま、上るがいい」
「いやだ。俺あ、その辺、捜して来らあ。お嬢さん、何うなさいます」
「兄も居りますし、和尚様にも、一度、挨拶をしてから――」
「じゃあ、貴女は、そうなさいまし。あっしゃあ、捜して来る」
庄吉が、行こうとした時、南玉が
「待てったら、庄吉」
と、叫んだ。その途端
「捜さずともよい」
義観が、声をかけて
「今に戻って来る」
南玉が、振向いて
「ええ? 戻って参りますかい」
「ああ来る」
義観は、頷いた。
「上って、待っているがよい。行きづまりの方へ行ったから、追っつけ、戻って来る。