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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
「おお、上出来、上出来、半分に煮つまったかな」
と、云って、土瓶の中を、のぞきこんだ。
「なるべく、急いで――駕を云うからの」
義観は、そう云って、硯と、紙とを取出して、書き出した。
深雪は、煎じた薬を、布でこして、湯呑へ入れた。そして、次の間に臥ている庄吉の枕頭へ来ると
「済みません」
と、云って、庄吉が、見上げた。そして、起き直ろうとして、力の入らぬ、未だ痛む身体を動かすのへ、深雪は
「無理をしないように――」
と、云って、支えたり、抱えたり――庄吉は、触れまいとする肌に、暖かさに、匂に、柔かさに触れながら――快く感じて
(病気なりゃこそだ)
と、思ったり
(意地汚えことを考えるな)
と、自分へ、叱ったりした。
「もう、大丈夫――」
「人間、死損うと、なかなか、くたばらねえもんでげすよ。これで、二度だ。三度目は、何うやって、くたばるか――」
と、呟いて、湯呑に、口をつけると、義観が
「清水寺に、月照という坊主がいる。それへ、この手紙を届けて。返事はいらん。此奴、坊主のくせに、尊王の、倒幕のと、いいおって、阿呆じゃ。それから、小太郎に逢うてのう――河内と、大和の国境に、生駒山という山がある。