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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
Read 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,573 characters · 178 screens
「内儀のお滝さんとかが、主人が夜半に脱け出したのを知らなかったのか」
平次の問いは要領よく事件の核心に触れて行きます。
「内儀のお滝は、好い女で五十そこそこで、家付き娘で、身体が弱い。疳が昂ぶると、側に亭主が寝ていても機嫌が悪いから、時々そっと階下へ行って寝るんだそうです。内儀は二階で」
そう言った夫婦生活は、平次の常識では考えも及ばず、貧乏人には出来ないことですが、家が広くて、暇があって、ヒステリックで、お綺麗だと、内儀のそんな我儘も時には許されるのでしょう。
「昨夜もそれをやったのか」
「尤も昨夜は、主人の方から言い出して、――用心が悪いから――とか何んとか、わけありそうに階下へ休んだそうです。夜半に誰かと逢う約束でもあったか、そこまでは内儀もわからなかったそうです」
「その内儀は、夜半に誰か外へ出た者のあることに気が付かなかったのか」
「雨戸が開いたような気がする――と言っていましたが、それも夢心地だったようで、それから暫らくして、ドシンと物の落ちる音がしたようだが、気にも留めなかったそうで」
「ところで、怪しいのが五人もあると言ったが、誰と誰だ」
「第一は番頭の勘三郎、三十五になる独り者で、内儀の遠縁とかまた従兄に当ると言いますから、主人の山三郎に怨みがないとは言えません。