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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
Read 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,573 characters · 178 screens
六
髷を切られた噂は、公儀のお耳にも入ったようだから、いずれ八千五百石の大身代は持ちきれまいよ」
「ヘエ」
「何人となく妾を入れて、ひどい目に逢わせて居る。嫉妬が激しくて、ケチで、無道で、薄情だから手のつけようがない。中には自殺したのも、責め殺されたのもあるということだ」
「それじゃ髷で仕合せで、首を切られても不思議はありませんね」
六
其晩銭形平次は、侍姿に化けて、土手から衣紋坂をブラリブラリと歩きました。
「意気過ぎますぜ、親分は。まるで島田重三郎か白井権八の廓通いという図だ」
「馬鹿、お前は顔を出さない方が宜い、鳥越の勘六の家で待って居ろ」
うるさく跟いて来る八五郎を追っ払って、平次はもう一度編笠茶屋の方へ引返します。
「精が出るな。斯う暗くなっちゃ、貰いもあるめえ」
立止ったのは、乞食坊主の鑑哲の菰の前でした。
「おや、親分さんで、妙な身扮で?」
鑑哲は木乃伊のような身体を起して、薄黒い顔でふり仰ぎました。杖にした青竹を力に上半身を支えるのが精一杯です。
「なアにお茶番だよ、誰にも言うな。ところで、もう亥刻(十時)だろう。店を仕舞っちゃどうだ」
「ヘエ、でも、本当の貰いはこれからで御座います。