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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
Read 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,573 characters · 178 screens
二
「違いますよ。隣町のお崎坊が顔を出すと、弾みがついて止らなくなるんで、あっしの尺八は怪談のせいじゃありません」
「お崎坊も怪談と縁のある顔だぜ」
「冗談言っちゃいけません、――ところで肝腎の喜三郎だ、あとで気が付くと髻は切れて、ザンバラ髪、それも知らず笛を吹いていたというから、こいつはまったく凄味たくさんの怪談じゃありませんか」
八五郎の話はそれでお仕舞いでした。
「耳よりな話だ、それで向う三軒両隣が空家になったと言う話が落ちだろう。さっそく俺がいの一番に越すぜ」
平次はまだからかっております。
二
八五郎がやって来たのは、それから二三日経ってからでした。こんな男があって、江戸中の噂をあさるので、結局平次がのほほんで暮しているのかもわかりません。
「どうだ八、牛込の怪談の方は?」
話は、平次の方から誘いを入れました。退屈で、退屈で八でもからかわなければ、仕様がなかったのです。
「ヘッ、お家繁昌で。化物が蔓こりますよ」
「はてね、箱根の東には、居ないことになっているのだが――」
平次は充分に面白そうでした。
「それは昔のことで、ヘッ、二人目はさいしょから屁っぴり腰で向ったら、この野郎は首尾よく腰を抜かして、眼を廻しましたよ」