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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
Read 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,573 characters · 178 screens
三
二階から舞台は直ぐですから」
「この真上に居たのか」
「いえ、向うの方で」、
「梯子段は」
「舞台の方へ出るのと、ここへ降りるのと二箇所にあります」
「二階に外に誰かいた筈だが」
「いえ、私一人で」
「すると、お前が火鉢を落したことになるが」
「そんな、そんな。そんな事」
お鈴はサッと顔の色を変えました。
今までそんな事さえ気が付かずに居たというのは、馬鹿でなければ恐るべき横着さです。
三
「お鈴ちゃんが、そんな事をする筈はありません」
躍起となって抗議したのはお夢自身でした。平次はそれに取り合わずに、
「ここには誰と誰が泊っているんだ」
「お夢とお鈴のほかには、囃子方のお伝と、六助、木戸番の与三郎、道化役の金太の六人でございますが」
「そのお伝、六助、与三郎、金太の四人はどこに居たんだ」
「お伝はお勝手のお仕舞、六助は小買物で外に居たそうで。金太は舞台の掃除で、与三郎は木戸を閉めていたそうでございます」
「お前たち夫婦は?」
「少し離れておりますが、家へ帰って晩飯にしておりました」
平次と八五郎は、小左衛門の案内で、問題の二階へ行って見ました。おどろくべき粗末な建築で、小屋に毛の生えたものに過ぎない上に、夥しいガラクタ道具がいっぱいに散乱して、本当に足の踏みばもありません。