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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
Read 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,573 characters · 178 screens
「俺という人間はお使い姫か、――まア、それには違いないけれど」
「八、何をむくれているんだ。路地で話もなるめえ、此方へ通すんだ」
平次はたまり兼ねて声を掛けました。
「さアさアズイと通ってくれ。御本尊は逢おうと仰しゃる」
二人の女は、平次の狭い家に通りました。お静はそれを迎えて、薄い座布団を出したり、七輪の下を煽いだり、いそいそととりなしておりますが、話の継穂を失って、二人の客は暫らくは黙って潮時を待っております。
「さて、その話の続きを聴かしてくれ。与茂吉とやらが、どうしたんだ」
挨拶抜きに、平次は話を引出しました。お六というのは、擦れっ枯らしと純情と、侠気と自堕落を兼ね備えたような、この社会によくある型の女、不きりょうではあるが、八五郎が強調したほど醜くはありません。
その後ろに、寄り添うように、小さく身を竦めたのは、これは非凡な娘でした。吹けば飛ぶような、恐ろしく華奢な身体と、情熱的な表情的な大きな眼が、その多い髪と、小さい唇とともに、恐ろしく印象的です。
「与茂吉さんを縛るなんて、金杉の竹松親分も、モノがわからないにも程があります。暗くなると、一人で町の湯へも行けないような男、正直で、弱気で、操り芝居を見ていてさえ、殺しの場は見ていられないような男が、自分の叔父さんを、殺すでしょうかね、親分」