Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
Read 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,573 characters · 178 screens
そんなに古いものではありませんが、不思議なことに、その櫛の中程、歯へ堅く挟んで、五六本の長い柔かい髪の毛が、キリキリと巻き付けてあるのです。
「この櫛は誰のだ」
「誰のともわかりませんよ。まだ見つけたばかりで」
「いずれわかるだろう、――こいつは飛んだ証拠になるかも知れないよ」
平次は死体から離れると、板倉屋の家の周囲を一と廻りしてみました。
さすがに見事な構えで、二階座敷が大川へ乗り出しているところは、十何日か前の晩に、棟梁の佐太郎と主人の万兵衛が中毒騒ぎを起した座敷でしょう。
塀の外の道は僅かに一間足らず、ろくな柵もないので、夜分などは川へ落ちないとは限りません。裏木戸の中には二た戸前の土蔵が棟を並べ、わけても一つは四十坪もあるでしょう、いかにも厳重で堂々としていて、板倉屋の富を物語っていそうです。
土蔵と土蔵の間に大きな物置があり、覗くとその中には、船の道具が雑然と並べてあります。
「八、これをどう思う」
平次はその奥の方から檜の手頃な棹を抜き出しました。
「先の方が濡れていますね」
八五郎は尤もらしく顔を寄せます。物置の奥に入れてある棹が、心持濡れているのは不思議ですが、八五郎にはそれ以上のことはわからない様子です。