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ぜにがたへいじとりものひかえ

橋の上の女 ――銭形平次傑作選2

野村 胡堂

Read 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,573 characters · 178 screens

Aozora Bunko

「では思いきって申上げましょう。――昨夜亥刻(十時)頃、裏の方で人声がいたしましたので、私は心配になって出て見ました。それが佐太郎親方のところにいる久治の声で、ひどく怒っている様子なので、捨て置けない心持になったのです」

「なに?」

「ちょうど私が裏木戸へ行った時、なんか川へ落ちたような、大きな水音がしましたが、覗いて見ると、川岸縁には誰もいませんでした。闇を透して見ると、町の方へ人の逃げて行く足音を聴いたように思いますが、確かなことはわかりません」

これは重大な証言でした。平次は黙って八五郎を振り返ると、心得た八五郎は猟犬のように、弾みきってどこかへ飛んで行きます。

「お前は川を覗いては見なかったのか」

「まさか主人が落ちたとは気がつきません。石でも投ったことと思って、そのまま家へ入ってしまいました。――ヘエ外にいたのはほんのちょっとで」

「もう一つだけ聴いておきたい」

「――――」

「棟梁佐太郎が死んだ時、お前は本道の全竜先生を追っかけて、その口を塞いだ筈だ。それを聴こうか」

平次の態度は容赦のないものでした。

「主人が苦しみながらも、全竜先生に百両も握らせるように申しつけました。