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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
Read 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,573 characters · 178 screens
「呆れた奴らだ、その野次馬の中へ、思いっ切り水でもぶっかけてやりたい位のものだ」
平次は江戸っ子の呑気さと、その物見高さに驚きました。多寡が女の子が逆立ちする位のことに、大騒ぎをする方が何うかしております。
「ところがその娘は、お琴と言って、たった十七ですぜ、逆立ちをして日本橋を渡って、何ういうことになります。久米の仙人が河童だったら、どんな事になります」
八五郎の長広舌は、平次の思惑とは反対に、いとも面白く弁じ立てるのです。
そのころ女の子の逆立ちは、思いのほか流行りました。緋縮緬を股に挟んで、お座敷の座興に逆立ちさせられる芸子もあれば、舟遊山の旦那衆が、いやがる芸子を捉えて、舟ばたに逆立ちさせるなどという悪どい遊戯は、国貞の描いた浮世絵にもたくさん出ております。金持の旦那衆はそれを眺めて悦に入ってることでしょう。ただそう聴いただけで、平次がいっこうに驚かなかったのも、遊蕩気分にひたった、グロテスクな旦那衆の遊び、と思ったのかも知れません。
「ところが、親分、こいつはわけのある事で、沢屋に取ってはのるかそるかの大仕事、千番に一番の兼合いを、娘っこのお琴が背負って出たんで、あだやおろそかの逆立ちじゃありません」