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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
Read 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,573 characters · 178 screens
「来ましたよ、親分、とうとう」
「何が来たんだ、少し顎の紐を締めろ」
「伊豆屋の若旦那の許嫁ですよ。お夏さんとか言った、そりゃ良い娘で」
「それがどうした?」
「橋場から、駕籠で来たんですって。伊豆屋の息子が死んだのが、どうしても怪しいことばかりだから、銭形の親分に調べて頂きたいんですって」
「三輪の万七親分は?」
「水死に何んの疑いもないからと、帰ってしまったそうで、――お嬢さんは路地にいますよ。呼んで来ましょうか」
「ともかく逢って見よう」
平次が引受けると、八五郎はさっそく格子戸をガタピシさせながら路地に飛び出し、
「さアさア此方へ、ズイと入って下さい。遠慮することはない」
などと如才もありません。
八五郎に追っ立てられるように、平次の家へ入って来たのは、噂の通りの良い娘で、十九というには若々しく、媚も誇張もないので、少し淋し過ぎますが、眼鼻立ちの端麗な、いかにも武家風な感じのする美人でした。尤も身扮はありふれた町娘で、少しの厳めしさもあるわけはないのですが、折り屈みがキチンとして、少し浅黒くさえある、白粉っ気のない顔立ち、それもまた不思議な魅力です。
「どうなすった、お嬢さん。