Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ぜにがたへいじとりものひかえ

橋の上の女 ――銭形平次傑作選2

野村 胡堂

Read 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,573 characters · 178 screens

Aozora Bunko

が、その泥棒がん燈の光を合図に、舟は八方から集まりました。

舟の中に残ったのは男一人、それは飛び込んだ八五郎に取って押えられました。水に跳び込んだ女の姿は、十数艘の船を動員し、八方から、松明をかかげて捜しましたが、ついに朝までも見付からず、朝の光の中に、夥しい船はそのまま引揚げる外はなかったのです。

船の中の男は、伊豆屋の下男元吉、船の中には、風呂敷に包んだ、五百両の小判が転がっておりました。そして人魚のような女は――言うまでもなく水神の森の茶店の女、お銀の姿だったことは言うまでもありません。

×          ×

それより半刻も前、水を潜って逃れたお銀は、そのまま捨ておき難いものがあったか、――いや、舟の中に着物を脱いだために、裸体で逃げるわけに行かなかったか、とにもかくにも水神の森の中の、茶店の裏口に立っていたのです。

「お松さん、開けておくれ、――私だよ」

晩春の水の冷たさに、お銀もさすがに顫えておりました。焔に腰を包んだような、物凄い裸体、流れた毛を持ち扱い兼ねた姿で、そっと雨戸に拳を当てるのです。

内ではコトコトと音がして、お銀の前にガラリと戸が開きました。