Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Read 私本太平記(一) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 246,214 characters · 495 screens
すばやく、受けとって。
「資朝卿の御返書か」
たずねたが、手を引くやいな、下の頼春は、別れの辞儀を見せたのみで、何もいわず、土龍のように姿を消した。
「……さてこそ」
廊の隅々には、打ち重なったまま、熟れ柿みたいな臭気を抱いて寝くたれている兵が見える。――俊基は足を忍ばせて、室へもどり、消えかけている燭の灯を掻き立てた。
資朝卿の筆に間違いない。
その中で、資朝は、こう告げている。
――自分が思うところは、そのまま、貴公の思うところと、一致していた。
罪は一人がかぶればよい。
貴公は、我れ一人死の庭につかんと仰せあるが、自分の覚悟もすでに極っている。貴公は世に残り給え。
なんとなれば。
貴公の英才や俊敏な活動力は、自分には真似もできないことだ。我れとて多少の自負もないではないが、一世の上に大機運を呼び起し、時乱の先駆に立ってゆくほどな素質には欠けている。
かつは、貴公よりも、自分の方が上卿(上官)であり、年上でもある。鎌倉の司断も、おそらく張本人は、この資朝と見るだろう。もし貴公が、主謀者は我れなりと主張しても、それにより、資朝を不問に付すはずもない。