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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(七)平次女難
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens
銭形平次捕物控
一
一
「あ、八じゃねえか。朝から手前を捜していたぜ」
路地の跫音を聞くと、銭形平次は、家の中からこう声をかけました。
「ヘエ、八五郎には違えねえが、どうしてあっしと解ったんで?」
仮住居の門口に立ったガラッ八の八五郎は、あわてて弥蔵を抜くと、胡散な鼻のあたりを、ブルンと撫で廻すのでした。
「橋がかりは長えやな、バッタリバッタリ呂律の廻らねえような足取りで歩くのは、江戸中捜したって、八五郎の外にはねえ」
平次は春の陽溜りにとぐろを巻きながら、相変らず気楽なことを言っているのです。
「へッ、呆れたものだ」
「俺の方でも呆れているよ。その跫音の聞えるのを、小半日待っていたんだ」
「用事てえのは、何ですかい、親分」
「それが少し変っているんだ。手前、昨日瓢箪供養に行ったっけな」
「行ってみましたよ、筆供養や針供養はチョクチョクあるが、瓢箪供養てえのは江戸開府以来だ、あれを見ておかねえと、話の種にならねえ」
「どんな事をやったんだ、一と通り話してくれ、――少し変なことがあるんだが、瓢箪供養の因縁が解らなきゃ、見当がつかねえ」
平次は煙管を伸して、腹這いになったまま一服つけました。