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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

四

多勢の野次馬は、このとき漸く気がついたように、母娘二人に手を貸して、死骸をあまり遠くないお楽の茶店に担ぎ込みました。

後に残ったのは、三つ股の源吉と、子分の安の二人だけ。もっとも安の手には、落合の徳松の縄尻が掴まれております。

「おや、剃刀じゃないか」

血潮の中から、源吉は平べったいものを拾い上げました。

「よく使い込んだ剃刀ですね、親分」

子分の安は片手の提灯をかかげました。

「いいものが手に入った。安、引揚げようか」

「ヘエ――」

源吉はその剃刀を、徳松の物と決め込んでいる様子です。

四

翌る朝、植村土佐守家来、柴田文内と吉住求馬、女乗物を用意して、お楽の茶店の裏口へ着けました。

「可怪しいぞ。簾が下がって、忌中の札が出て、中から線香の匂いだ。誰が死んだのだろう?」

柴田文内、鼻をヒクヒクさしております。

「左様――、主人かな」

吉住求馬にも合点が行きません。

せっかく玉の輿に乗りかけたお菊が、昨夜のうちに、非業の最期を遂げたことは、もとより知る由もなかったのでしょう。

お楽弥助夫婦も、あまりの事に顛倒して、今日植村家の迎えが来るとは知っていながら、ツイ使いの者を走らせて、それを止めることまでは考え及ばなかったのです。