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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

五

「後ろを振り向くどころか、横顔も見せねえ。お重詰らしい風呂敷を持って真っ直ぐに行きましたよ、あんまり後ろ姿が綺麗だから、何遍か前へ駆け抜けて顔を拝もうとしたが――」

「馬鹿、そんな心掛けだから、お神楽の清吉に殴られるんじゃないか」

「親分、何とか敵を討っておくんなさい。あのお神楽の野郎、あっしの鼻へ指を突っ込みやがって、勘弁ならねえ野郎だ」

「ウ、フ、お前の鼻を見ると、指ぐらい突っ込みたくなるだろうよ。踵でなくて仕合せだ、まア、勘弁してやれ」

「ね、親分、せめてあの娘の家だけでも判りゃア」

「そのぐらいのことならわけはないよ。三輪の万七親分か、お神楽の清吉の後を跟けていりゃア、日の暮れるまでにはきっと判る」

「有難え、それじゃ親分」

ガラッ八はまた飛び出しました。

五

娘の素姓はすぐ判りました。

横山町の米屋――といっても、金貸の方で名高い万両分限、越後屋佐兵衛の跡取り娘お絹、弁天とも小町とも、いろいろの綽名で呼ばれる、界隈切っての美人だったのです。

編笠乞食の素性も、それにつれて次第にはっきりしました。

越後屋の手代弥三郎といって、二十五。主人の佐兵衛が、今から二十五年前、観音様へ朝詣りをした時、雷門の側に捨ててあったのを拾って、そのまま自分の子とも、奉公人ともなく育てたのでした。