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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(七)平次女難
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens
三
「あッ」
低い小さい声ながら、異常な驚きにかき立てられた女の悲鳴です。行灯部屋と見たのは、混み合った時はやはり客を入れる部屋だったのでしょう。長四畳の灯は消して、窓から入る月の光では、女の素姓もはっきりは読めません。
二人の浪人はしばらくその辺中を探している様子でしたが、最後に平次の隠れた部屋をパッと開けました。
「何だ、ここにも人が居るぞ」
一歩大きな浪人が踏込みます。
「ここは女一人でございます。御無体をなさいませんように」
凜とした声、――入口に立ち塞がったのは、異香薫ずるような部屋の主でした。
「何、女一人?」
さすがの無法者も、面喰らって引下がりました。
「女一人でも油断はならぬぞ、一応中を見せて貰おうか」
小さい方の浪人は、その背後から警戒の眼を光らせました。
「取乱しておりますが、どうぞ御覧下さい」
女はツト身を引きました。それを追って廊下の灯を背にした四つの眼。
「フーム、居ないぞ」
「外へ飛出したのかも知れぬな」
「逃げ足の早い奴だ」
二人はプンプンとして引揚げます。
三
女はその後ろ姿を見送って、静かに行灯に灯を入れ、鬢と襟を直して、押入の戸を開けました。