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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

三

その時平次は二十八歳、今売出しの脂の乗り切ったころでした。

三

平次は早速「福屋」へ乗込んでみましたが、日も経っていることであり、行方不明になった三人の兄妹が、どうして誘き出されたか、まるで見当が付きません。その頃は警察制度も至って不完全で、町人もそれに信頼する気は微塵もありませんから、これほどの事件を、どこへ届け出るでもなく、八十何人の奉公人や、一家身内の者が寄ってたかって、ただもうワイワイと騒ぐばかりです。

わけても主人の善兵衛は、半病人のような有様、評判のいい岡っ引の平次が顔を見せると、

「親分、何とかして三人の者を探し出して下さい。場合によっては、福屋の身上を半分潰しても構いません」

拝まないばかりに頼み込みます。

残った家族というのは、十六になる娘のお糸と、六つになる男の子の栄三郎と、一年ばかり前に娶った後妻のお滝だけ、世間並に考えると、この継母のお滝が一番疑われる地位にあるわけです。

本人もそれを悉く承知で、岡っ引の平次と顔を合せると気の毒なくらいオドオドしますが、平次の眼から見れば、大それた悪事を働くほどの女とも思われません。

年の頃三十二三、善兵衛に比べると少し若いが、大家の女房にふさわしい美しさも品もあり、奉公人の評判もまず悪くない方です。