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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

平次の推理は、事件を次第に怪奇な――が犯罪性のないものにして行きます。

「自殺と決ったら長居は無用だ。引揚げましょうか、親分」

「待ってくれ、もう一つ、この手紙は誰が書いたか、元助と宗匠に鑑定して貰おう」

平次は――瓢々斎は人に殺されたに違いない――と、石原の利助のところへ投込んだ、無名の手紙を取出して、露の家正吉と元助に見せました。

「見たこともありませんよ、親分」

能筆で聞えた正吉は、蚯蚓ののたくったようなのを見て苦笑します。

「元助は?」

「へッ、おらには判りませんや」

元助はニヤリニヤリとしております。自分の無筆を恥じての照れ隠しでしょう。

「上手な筆蹟を、わざと下手に見せたんじゃあるまいね」

平次は正吉に訊ねました。

「そんな事はありませんよ。下手は上手の真似が出来ないように、上手は下手の真似は出来ないものです。字の呼吸や字配りを知っていると、左手で書いても、口で書いても、何となくうまさの出るものです」

正吉の言うのは尤もでした。

「死んだ瓢々斎の字は?」

「あんまり上手じゃありませんが、こんな下手じゃありません。それに筆や墨がひどく悪いし、たったこれだけの文句に間違った字や、仮名違いが三四ヶ所あるでしょう。