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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

固く引締まった顔が柔らいで、美しい血潮が頬を染めます。

「お千代」

「私に構わず、その綱を斬っておしまいよ、私ゃア磔柱の上から、福屋の屋根にぺんぺん草の生えるのを見てやりたい」

なんという気の強い女でしょう。その美しさも滅法ですが、言う事を聞くと大の男を顫え上がらせます。

「待て待て、もう一つ言って聞かせる事がある。福屋善兵衛は五番目の倅を誘拐されて、歎きの余り、今朝死んでしまったぞ」

平次は最後の切札を出しました。

「えッ」

「それでお前たちの怨みも消えるだろう。五人の子供たちに罪はない、平次が悪いようには計らわない、許してやれ」

「…………」

「敵は討ちすぎるものじゃない。サア、お前の女房の命と五人の命と釣替えだ。この縄を解いてやるから、お前も降りて来い」

平次は本当にお千代の雁字がらめを解き始めました。赤い振袖の夫と、必死の縄目から解放された女房は、上と下とで感慨深く顔を合せます。

*

「平次、お前はまた大事な捕物を逃したそうじゃないか」

「ヘエ――」

与力の笹野新三郎、少し苦り切ってこう申します。

「お千代の縄を解いて、源太と一緒に逃がすなどは、少しやり過ぎではないか」