Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(七)平次女難
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens
「竹筒を引摺る術もあるぜ、お神さん」
「まア、親分さん、お口の悪い、蟻が蚯蚓を運ぶんじゃあるまいし」
「ちょいとここを借りるよ」
「さアさアどうぞ」
怪しげな座蒲団を敷いたのは、多の市の家とは反対側になっている濡縁です。
「ところで、何もかも知っているようだから、つまらない事は抜きにして訊くが、お神さんに心当りはなかったのかい」
女世帯らしく小綺麗に片付いた家の中を見廻すともなく、平次はこう訊きました。
「お生憎様、何にも知りませんよ――でもね、親分さん、あの佐の市というのは、お隣の蛸市の朋輩のくせに、打って変った道楽者で、蛸市にはうんと借金があるようだし、それに蛸市が検校になるのを、一番嫌う人間ですよ」
「なるほどね」
「その上、滅法カンのよい人で、賭け碁までやるというくらいだから、眼が見えなくたって、戸閉りのない朋輩のうちへ、泥棒ぐらいには入りかねませんよ」
「それは知らなかった。有難うよ、お礼をするぜ、お神さん」
「まア、親分さんはお世辞ものね」
「ところで、その壁の穴から、あの隣の置床のあたりは見えないだろうか」
「まア」
「ちょいと覗かして貰うぜ」
「悪戯をしたのは鼠ですよ、親分さん、近頃の鼠はそりゃタチが悪いから、壁でも板戸でもすぐ喰い破りますよ」