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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

「ヘエ――」

何という間の悪さ、気のきかない叔父さんのような事をいって、平次はぼんやり家へ帰りました。

「親分」

先廻りして待っていたのは、ガラッ八の八五郎です。

「何だ、八」

「九百九十両の盗人の当りはつきましたか」

「それがつかねえ」

「あんな馬鹿気た事は、半刻(一時間)で判りそうじゃありませんか」

「それが半日かかって眼鼻もつかねえ、――どうだ、八、聴いてくれるか」

「ヘエ――」

「今日一日で捜ったことを纏めて話すうちに、何かよい智恵が浮ぶかも知れねえ。鼻を掘らずに、神妙に聴くんだよ」

「ヘエ――」

八五郎はあわてて長い顎を撫でまわします。

「お浜は親孝行だ、あの娘が父親の金を盗るはずはねえ」

「ヘエ――」

「だが、あんな狭い家で、締りがなかったにしても、酔っ払っている多の市はともかく、若い娘のお浜が、自分の枕から一間とも離れねえ置床の柱を外して持って行くのを、知らずにいるはずはねえと思うがどうだ。あの竹筒を外すと、置床の臍がきしむのは、木口の光る様子で見ても解るぜ」

「…………」

「すると、お浜は泥棒を見ているはずだ。見ていても言えなかった――と考えたらどうだ」

「ヘエ――」