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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(七)平次女難
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens
「おや?」
平次は岸の泥の中から変なものを抜き出しました。
「子供の玩具じゃありませんか、親分」
「笛だよ」
泥を拭くと、赤い段だらの横縞を書いた玩具の竹笛で、まだ少しも傷んでいないところを見ると、昨今池の水際の泥に突き差したものでしょう。
「誰のでしょう」
ガラッ八は眉をひそめました。
「こいつはとんだ獲物かも知れない。黙っているんだよ」
「ヘエ」
平次は八五郎に口止めをして、竹笛をそっと袂に入れました。
「さア解らねえ、何もかも判じ物だ」
ガラッ八は忌々しそうに大舌打をしました。
「俺には段々解って来るような気がするよ」
平次は何か他のことを考えている様子です。
「第一に解らねえのは、死ぬ覚悟をした人間が、何だって瓢箪供養なんて、手数のかかる事をしたんだろう」
「何十年の間大事にしてきた、三十六の瓢箪を、自分と一緒にこの世から暇乞をさせたかったのさ。酒好きの考えそうな事だよ」
「ヘエ――そんなものかなア、俺なんか酒は嫌いじゃねえが、まだ瓢箪と心中する気になったことはねえ」
「枡の角からばかり飲むからだよ」
「違えねえ」
八五郎は掌で額を叩きました。正に一言もない態です。