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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(七)平次女難
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens
「心配することはないよ、下手人は今日明日中に判るだろうから」
「本当でしょうか、親分さん」
「判ったところで、どうもならないかも知れないが、ともかく、落着いているがいい――そう言ったところで、娘二人に死なれちゃ、落着いてもいられまいが」
平次の眼には、深い哀憐が動きました。
「有難うございます、親分さん」
これが岡っ引手先の口から聞く言葉でしょうか。お楽はツイ恥も忘れて、声を立てて泣きます。
「大急ぎで来て間に合ったのが何よりだ。お菊の死顔を見せて貰おうか」
「ハイ」
お楽は漸く涙をおさめて、三人を奥へ案内しました。幸い入棺したばかり、白布を取って蓋を払うと、早桶の中に、洗い浄められたお菊の死骸が、深々とうずくまっております。
静かに顔を起してやると、左顎の下へパクリと開いたのは、凄まじい斬傷、蝋のような顔に、昨日の艶色はありませんが、黒髪もそのまま、経帷子も不気味でなく、さすがに美女の死顔の美しさは人を打ちます。
「フーム」
「銭形の兄哥、どうだい」
と源吉。
「刃物が違う」
「えッ」
「剃刀には峰があるから、こう深くは切れない」
「いや、肉がはぜているぜ」
源吉は敢然としました。