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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(七)平次女難
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens
銭形平次捕物控
一
一
「あッ危ねえ」
銭形の平次は辛くも間に合いました。夜桜見物の帰りも絶えた、両国橋の中ほど、若い二人の袂を取って引戻したのは、本当に精一杯の仕事だったのです。
「どうぞお見逃しを願います」
「どっこい待ちな、――そんな身投げの極り文句なんか、素直に聞いちゃいられねえ」
「死ななきゃならないわけがございます。どうぞ、親分」
争う二人、平次は叩きのめすように、橋の欄干に押付けました。
「頼むから静かにしてくれ。俺は横山町から駆け付けたんだ。息が切れてかなわねえ、――意見をするのが面倒臭くなると、二人を縛って欄干に晒し物にする気になるかも知れないぜ」
「親分さん」
「解ったよ。三百八十両の大金を巾着切りにやられて、主人への申し訳、言い交した女と一緒に、ドブンとやらかそうという筋だろう」
「えッ」
「お前は、増屋の養子徳之助、――こっちはお富というんだってね」
「そういう親分さんは?」
「神田の平次だ」
「あッ、銭形の――」
徳之助とお富は、死ぬはずの身を忘れて、町の家並に傾く桜月の薄明りの中に、江戸第一番の御用聞と言われた平次の顔を見直しました。
「横山町の店からの使いで飛んで行ってみると、――一度店へ帰ったお前が、お富と牒し合せて飛出したという騒ぎの真っ最中だ。