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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

向島だの、三百八十両だのと――俺はもう悪事とは縁切りさ。三年前から堅気になって、近頃では左官の彦兵衛と同じように通用する経師屋の東作だ。可怪しな事を言って貰いたくないね」

「そうでもあろうが東作、――俺が聞いた手口は、昔のままの描き菊石だ。あの三百八十両を抜かれたばかりに、昨夜は両国橋から、危なく若い二人、身を投げるところよ」

「一人は彦兄イの――娘お富さんとか言ったね」

「それまで知っているなら、言うだけ野暮だ。なア、東作、昔の誼、その三百八十両を、この彦兵衛の顔に免じて返してくれ、きっと恩に被る――」

「それじゃ彦兄イ、本気でそんな事を言いに来たのか」

「本気も、本気この通りだ。娘の命にも関わること、愚に返った彦兵衛が一生の頼みだ。聞いてくれ、東作」

彦兵衛は両手を畳に下ろして、涙ぐんでさえいたのです。

「やい、彦兄イ」

「…………」

「いやさ彦兵衛、年のせいかは知らねえが、大層手前はボケやがったな」

東作は銀煙管を逆手構えに、火鉢を小楯に取って屹となりました。

「東作、頼む」

「東作東作、と、安くして貰いたくねえ。昔は悪党仲間の兄イ分だろうが、――稼いだ金をそっくり返せというのは、こちとらにはねえ仁義だ。