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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

お富坊に気に入るように、三百八十両の金はちゃんとここに持って来たよ。次第によっちゃ熨斗をつけないものでもない――なアお富坊、今晩にもこの俺の女房になる気はないかえ」

しな垂れかかる四十男の醜さ、お富はゾッと寒気がして、父親の背後に逃げ込みました。

「お富、――あれほど言っておいたじゃないか、酌をして上げな」

「ハイ」

「なア、東作、夜は長え、まず御輿を据えて飲むがいい。――そのうちにはお富も、一と晩経てば、一と晩だけ年を取るというものだ」

「その代りお互も一と晩年を取るぜ、へッへッ。だが、全く堪らねえぜ、――お富坊の酌で飲むなんて、俺は三年越し夢に見た図だが、昨日まではこんな幸せにありつこうとは思わなかったよ」

「だからよ、存分に飲みな」

「介抱はお富坊に頼むか、ゲープ」

東作は鯨のように飲みました。逃げ腰のお富は、彦兵衛に眼で叱られて、観念しきった手に銚子を挙げるのです。これが徳之助を救う方法と聞かされなかったら、どんなに父親が引止めたところで、四半刻(三十分)とも我慢をするお富ではなかったでしょう。

酉刻から亥刻まで、呑んで、呑んで、東作はとうとう正体を失いました。