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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(七)平次女難
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens
何もかも、平次と見込んでの嫌がらせらしく、どちらの気配を見ても、脅かしや酔狂でないことは、平次にもよく解ります。
「御免蒙りましょう。あっしは斬られつけないから、そんな遊びの相手にはなりませんよ」
「何をッ」
早くも脇差を腰に、振り分けの荷を右手にさらった平次は、中腰になって、二人の隙を窺います。
「こいつは面白い。鳥も飛ばなきゃあ撃つ張合がないというものだ、逃がすな」
「応ッ、ここは鉄壁だ、蟻一匹這い出させるこっちゃねえ」
前後から迫る刃、平次は相手の深刻な害意を読むと、もう躊躇しませんでした。脇差を引っこ抜いて、武士と渡り合うのを不穏当と思ったか、右手に掴んだ振り分けの荷、――それを入口を塞いだ大男の股ぐらへパッと投ったのです。
「わッ」
不意を喰らって、大男は前のめりになりました。咄嗟の隙に乗じた平次、一気にその頭を飛越して廊下へ――。
「無礼者ッ」
後ろから追う二人の浪人者。旅籠屋中は引っくり返るような騒ぎになりました。
二条の刃に追い詰められた平次は、しばらく廊下を逃げ廻っておりましたが、どの部屋も必死と内から障子を押えて、平次を入れてくれそうもないのを見ると、浪人者の姿が納戸の蔭に隠れた機会を掴んで、階段の下の行灯部屋の中へ、パッと飛込んだのでした。