Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

五

五

「親分」

女はそっと小屋の中へ滑り込みました。あれから小半刻も経ったでしょう。

「…………」

平次は暗がりの中に、腕を組んだまま、木像のように黙りこくっております。

「親分さん、――大変なことになりましたよ」

お局のお六の声が、激情に弾みます。狭い小屋の中は、この女一人を入れただけで、近々と体温を感ずるよう。

「…………」

が、平次は相変らず黙りこくったまま、壁の方を向いてプツリとも音をあげません。

「親分、まさか座禅じゃないでしょうね。返事ぐらいはして下すったら――?」

「…………」

「でも黙って聞いて貰った方が、言いいいかも知れない。幸い顔も見えないし」

「…………」

「親分さんが、何の用事で函嶺へ来たか、それはよく解っていますよ、――大公儀から、駿府へ送る御用金が六千両、二千両の箱が三つ、馬に積んで、井上玄蕃様が宰領をして、わざと大袈裟な守護はつけず、銭形の平次親分がたった一人、御鑑定に叶って、函嶺の関所を越すまで、蔭ながら守護して来るという話は、海道筋を縄張にしている、私達の耳に入らずにいるはずはない――」

「…………」

お六は大変なことを言い始めました。