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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

「ところで、お楽、お前のような女が、なんだってまた身を投げる気になったんだ」

平次は質屋の亭主にはかまわず、船を両国の方へ漕がせながら、漸く心持が落着いたらしいお楽に話しかけました。

「何も洒落や道楽に死ぬ気になったんじゃありません。親分、お怨み申しますよ」

「何?」

「兄の香三郎が、親分の縄に掛って、伝馬町に送られてから、世間の人は私を相手にしてくれません」

「…………」

「兄は泥棒かも知れませんが、妹の私は何にも知りゃしません。それを町内の“構い者”にして、厄病神のように追払ったのは、何という訳の解らない人達でしょう」

「…………」

「大泥棒の妹と知れると、どこでも三日と置いてはくれません。三月の間に五軒も越して歩いて少しばかりの貯えも費い果し、身でも投げなきゃ、乞食をするより外に身の振り方の工夫もつかなかったのです。親分やお上を怨んじゃ悪いでしょうか」

平次も驚きました。その頃江戸中を騒がせた三人組の大泥棒のうち、一人は逃げ、一人は死に、香三郎というのだけ捕ったのを、今年中の大手柄にしていると、いつの間にやら、こんなとんでもないところに罪を作っていたのでした。