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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(七)平次女難
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens
三
たいような、言いようのない衝動を感ずる――といった性の女だったのです。
三
四五日は無事に過ぎました。
お静は相変らずまめに立働いて、何の蔭もないように暮しておりますが、気を付けて見ると、呆然して溜息を吐くといったような様子が、ちょいちょい平次にも見られるようになって来ました。
お楽はガラッ八がいったように、少しねっとりしておりますが、奉公人のように、よく働いております。妾、旅芸人といった過去はあるにしても、平次やお静の親切な仕向けに折れたのでしょう。見たところ、綺麗で、才走って、身だしなみがよくて、知らないものが見たら、こっちが平次の女房で、お静を妹とでも思うことでしょう。
「ね、お前さん、ちょいと」
ある日、お楽の留守を見定めて、お静は物蔭に平次を呼び入れました。
「何だえ、誰も聞いちゃいない、用事があるならそこで話せ」
平次は少し面倒臭そうでした。
「私、こんな事は言うまいと思ったけれど、気味が悪くて、どうにも我慢がならない。お願いだから、お金か何かやってお楽さんを外へ預けて下さいません?」
「何?」
予想外なお静の言葉に、平次は眼を瞠りました。
「――出て貰ったって、その日に困らせるような事さえしなければ、義理は済むじゃありませんか、お願いですから」