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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

九

万七と争ったところで仕様がないと思ったのでしょう。万七はしかし委細構わず続けました。

「新助は怪しいが、自分であれだけの傷を背中へつけられるわけはなく、番頭は年寄りで荒っぽい事の出来る柄ではありません。もう一つ、動きの取れない証拠は、主人と新助を斬った脇差はこの民五郎のもので、中味は銭形のが持っているはずでございます」

万七の言葉には淀みもありませんでした。

「それは非道だ。私は人を殺すような人間じゃありません。まして自分の兄を手にかけるなんて、聞いても恐ろしい――」

民五郎はあまりの事に転倒して、縛られたまま身を揉みますが、縄尻を押えたお神楽の清吉は、グイグイと引いて大地に押付けております。

九

「銭形の、民五郎が下手人でなきゃア、誰が殺したんだ。縄張は縄張、物の道理は物の道理だぜ――。わざわざ笹野の旦那をおつれして、見事俺に恥を掻かせるつもりだろうが、そんなわけにゆくものか」

万七はしきりといきり立っております。

「そんな訳じゃないよ、三輪の、口で言っても解らない事があっちゃ、人間一人の命にかかわるから、旦那を始め皆んなの目で見て貰おうというんだ」

平次はそれを宥めながら、横山町の越後屋の店から入って行きました。