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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens
「宗方善五郎は藩金を私し、拙者の弟を殺した憎むべき奸賊ではあるが、拙者にはそれを討つべき名分はない。そこで、せめては同じ町内に住んで、悪人の行く末を見窮め、倅が成人の上、故主に帰参のお願いするはずで、今日まで相待ったのじゃ。倅は当年七歳、あとせめて十年」
杉之助の述懐は筋立って少しの疑いも挟みようはありません。
「御尤もで」
平次はそれを全面的に肯定して聴く外はなかったのです。
閑居に慣れ、貧乏に慣れ、読書三昧に打ち込んで、有峰杉之助はもう帰参の望みなどはなかったのかも知れませんが、七つになる倅のために、唯一の出世の機会を待っているのでしょう。
「お、杉丸、帰ったか」
折から母親と一緒に帰って来た倅杉丸を迎えて、杉之助の顔はさすがに淋しそうでした。
「ただ今戻りました」
小買物にでも行ったらしい内儀のお延は、杉之助の前に三つ指を突いて、それから平次と八五郎にていねいに挨拶しました。
「ヘエー、今日は」
武家の内儀に思いのほか丁寧にあしらわれて、八五郎は少し面喰らった様子です。
「宗方善五郎は昨夕死んだそうだ、――自害をしたといったな、平次殿」
杉之助は平次を顧みます。