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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens
銭形平次捕物控
一
一
銭形平次が門口の雪をせっせと払っていると、犬っころのように雪を蹴上げて飛んで来たのはガラッ八の八五郎でした。
「親分、お早う」
「なんだ、八か。大層あわてているじゃないか」
「あわてるわけじゃないが、初雪が五寸も積っちゃ、ジッとしている気になりませんよ。雪見と洒落ようじゃありませんか」
そう言う八五郎は、頬冠りに薄寒そうな擬い唐桟の袷、尻を高々と端折って、高い足駄を踏み鳴らしておりました。雪はすっかり霽れて、一天の紺碧、少し高くなった冬の朝陽が、真っ白な屋根の波をキラキラと照らす風情は、寒さを気にしなければ、全く飛出さずにはいられない朝でした。
「たいそう風流なことを言うが、小遣でもふんだんにあるのか」
「その方は相変らずなんで」
「心細い野郎だな。空ッ尻で顫えに行こうなんて、よくねえ料簡だぞ」
「へッへッ」
「いやな笑いようだな、雪見に行こうてエ場所はどこだ」
「山谷ですよ」
「山谷?」
「山谷の東禅寺横で」
「向島とか、湯島とか、明神様の境内なら解っているが、墓と寺だらけな山谷へ雪を見に行く奴はあるめえ、――そんなことを言って、また誘い出す気なんだろう」
「図星ッ、さすがに銭形の親分、エライ」